text:ヴェルヴェット・ブルーヘヴンによるアリス・ブルーヘヴンについての証言
「これから仕事に行ってくるから、おとなしく留守番しているんだよ」

アタシが帰ってきた時のあいつときたら、全身泥だらけで草木の切れ端――アタシですら見たことのないような種類の――をその大きな耳や足に纏わりつかせて、まるで遊び疲れたかのようにベッドでぐっすり眠っていた。
傍らに転がるのはいつも一緒のウサギのぬいぐるみとひび割れた手鏡。
たしかに家には鍵を掛けたはず。もちろん合鍵なんてものはないし、扉そのものにもちょっとした細工を仕掛けてあの子一人じゃ簡単には開かないようにもしてあった。
じゃあなんでこいつはついさっきまで外で遊んでましたって具合に泥だらけなんだ?
あとで本人に問いただしてみたら「おねーちゃんがいなくてさみしかったから【あっち】であそんできた」なんて、いつもの人形みたいなすまし顔で、ウサギのぬいぐるみをぎゅう、と抱きしめながら言う。

なあアンタ、【魔法】って知ってるか?アタシら【魔女】が使う力のことさ。
アンタらの【能力】とは少し違う……アンタらが【星】を根源とするならアタシらのそれは【月】なんだ。
月を愛し精神を同調させて少しばかりその力を借りている感じ。解るか?
魔法と魔女が異端な理由はそれだ。カービィたるもの、普通は星を愛さなきゃな。

話を戻そう。
つまり何が言いたいかっていうと……母から魔女の血を継いでいたのはアタシだけじゃなかったってこと。
うつつの魔女】、アタシの可愛い妹、アリス・ブルーヘヴンにはくれぐれも気を付けるといい。
さもないとアンタも【あっち側】に連れて行かれるぜ、きっと。




inserted by FC2 system