『ウチの名前はねー、メーデーっていうんだよー』
『めぃ、でー…?』
『うん、メーデー・シンセミア。おじきがつけてくれたんだよ。天使ちゃんはなんていうの?』
『ジノ』
『ジノ?』
『……ジノ・カーマイン・シルドア』
『へええ、なんかかっこいい!』
『でもぼくは、あんまり好きじゃない』
『なんで?』
『自分の家が、嫌いだから……』
『それじゃあさ、ミネちゃんって呼んでもいい?』
『??……どうして?』
『だって、山の頂上に落っこちてきたから』
『よくわかんないけど、いいよ』
『やったぁ! じゃあさ、ミネちゃんもウチのこと、何かあだ名で呼んでよ』
……
……ぃ
ぉ……い……
「おーい、こんなとこで寝てると風邪ひいちゃうよー?」
ぺちぺちぽすぽすと頬や翼を軽く叩かれて、
「んん……?……。何で俺、こんなとこで寝てんだ……?」
浅く心地良い感覚は喪失し、
「昨日のライブめっちゃテンション上がってたからその反動じゃないー?」
ゆっくりと床の上に在る己の体を起こしながら、
「マジかよ……」
軽く驚愕そして瞼を擦り欠伸の後に、
「ていうかその格好って昨日のまんまじゃん。酒臭いしお風呂入ってきなよー」
いつものローテンションで歯に衣着せぬ彼女と、
「めんどくせー……」
そう言いながらも仕方なく立ち上がる俺。
…………。
「……なあ、」
「うんー?」
「なんかさっき懐かしい夢見た」
「へえ、どんな?」
「俺とお前が初めて会った時のことそのまんまだった」
「……ミネちゃんってもしかして意外とロマンチスト?」
「なんでそうなるんだよ」
ああ、でも案外間違ってもいないかもな。
なあメイ、こんな風に考えたことってあるか?
もしあそこでお前に出会わなかったら俺はきっと今頃、ここでこうやってお前と話したりなんかしていないと思うぜ、いろんな意味で。